社会保険労務士法人ぶれす

2023.09.29

動物病院で多いご相談⑤育休から復帰するとき

こんにちは。特定社会保険労務士の延島です。

前回のブログ「動物病院で多いご相談④、妊娠したスタッフへの対応」では、妊娠中の働き方や事業主が行う対応についてでした。
さて、育休中のスタッフがいよいよ復帰が近づいてきました。
復帰後はどんな働き方になるでしょうか。

 

お子様がいる方は育児介護休業法で次のような制度が定められています。

●育児のための短時間勤務
いわゆる時短勤務です。育休からの復帰にあたって、お子様の保育園のお迎え時間の都合から、まずはこの働き方を検討する方が多いのではないでしょうか。
お子様が3歳になるまで1日の勤務時間を6時間とすることができます。

●子の看護休暇
小学校に入る前のお子さんが、病気やケガをした場合に、1年に5日取れる休暇です。
お子さんが2人以上いる方は、10日まで取れます。
ただ、法律では無給でもよいことになっていますので、給与を支給するかもあらかじめ、就業規則など作成して決めておきましょう。

●所定外労働の制限
こちらもお子様が3歳になるまでの制度です。
所定外労働となっていますので、例えば4時間のシフトの日であれば、4時間を超えたところが所定外労働です。

●時間外労働・深夜業の制限
小学校に入る前のお子さんがいる方の制度です。
先ほどの所定外労働の制限との違いは
時間外労働なので8時間を超えたところ、深夜労働は22時~朝5時までの時間です。
お子さんをみてくれる方がいないと、残業や深夜の勤務は難しいので設けられている制度です。

 

👶保育園がお休みだから、お子さんがいる方は日祝休ませないといけないんでしょうか?
この制度はあくまで「労働時間」に対してです。
出勤日や出勤日数はこれまでと変わりません。

👶お子さんがいると従業員には全員時短勤務になりますか?
労働者の方が希望した場合、となりますので、一律に適用するわけではありません。

👶時短勤務の6時間とは何時から何時までですか?

病院の診療時間に合わせて出勤して頂きたい場合などは、あらかじめ時短勤務を●時~●時と育児介護休業規程などで決めておきましょう。

👶この制度を使うのは女性だけですよね?
これは女性に限らず男性も対象ですので、男性スタッフの奥様がご出産後、男性スタッフが育児短時間勤務を取ることもあります。
育児介護休業法で定められてるものですので、うちの職場は無いから~といったことはできず、労働者が請求したら対応しなければなりません。

復帰後の働き方とは話がそれますが、フルタイムで採用したスタッフの方が、入社後に事情が変わり短時間勤務を希望するというケースもあります。
フルタイムで採用したのに困る!となってしまうこともありますので、入社早々の方を対象外(1年未満の方)とするには、あらかじめ労使協定を結んでおく必要があります。

👶子の看護休暇を無給にした場合、欠勤と何が違うですか?減額されるなら使わないのでは?
欠勤というのは、本来労務提供する日に、休んでしまうことです。
そのため有休の出勤率の算定や、人事評価に影響することがあります。
看護休暇は、無給の場合、欠勤のように休んだ分の賃金を給与から引かれることは変わりませんが、法律で認められた権利です。
そのため看護休暇をとったことで不利な取り扱いをすることは禁止されています。

お子さんが小さいうちは、熱を出したり、保育園が預けられないことがあります。
有給休暇を使い切ってしまうこともありますので、そのような場合に「子の看護休暇」を使ってお休みすることができます。

👶お子さんの病気で早退や当日欠勤が多くて診療やトリミングの予約をキャンセルすることに、、、受付などに職種を変えてもらってもいいでしょうか。
これまでと同じ仕事への復帰が原則ですが、やむを得ない理由がある場合、スタッフとよく話し合って、納得してもらって配置転換をしましょう。

 


動物病院のスタッフの方が復帰する場合、土曜、日曜祝日の勤務についてどうするかという点が、大きな課題となっています。
日曜祝日は、認可保育園のほとんどが預かってくれませんし、土曜日も午前中のみといったところもあります。
復帰にあたっては、土日祝日の勤務があることや、ご家族のサポート状況など、スタッフの方と面談して、お互いにできること、できないことをすり合わせておきましょう。
育児休業の復帰をサポートする事業主の方へ、「両立支援等助成金」という助成金があります。
休業前と復帰前に確認しておく面談シートが提供されていますので、面談する際に参考にしてみてください。

 

時短勤務者のサポートで他のスタッフに負担がかかることもあります。
業務の見直しを行いパートスタッフを確保するなど対策など、他のスタッフの負荷も考えておかなければなりません。

 

息切れしそうですね。。。
これじゃ雇えない、仕事にならないという声が聞こえてきそうですし、復帰後、うまく勤務できず退職されたりパートになる方もいます。

ただ、ちょっと落ち着いて考えてみると、実は育児に限らず、介護や病気など、誰もが長期にお休みしたり、フルタイムで働けなくなる可能性があります。
男性スタッフが育児休業や時短勤務をするケースも増えてくることでしょう。
動物看護師の方に週1日在宅勤務を取り入れている動物病院もあります。
SNSやDM対応など、業務の合間に院内で行っていた業務を集中して行えると好評です。

 

動物病院の仕事は、動物の命を預かってケアし、飼い主さんに幸せを提供する素敵な仕事です。
今年から愛玩動物看護師の国家資格も誕生しました。
一生の仕事にできる職場づくりを少し考えてみませんか。

 

 

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