社会保険労務士法人ぶれす

2023.09.01

動物病院で多いご相談④、妊娠したスタッフへの対応

こんにちは。特定社会保険労務士の延島です。

 

動物病院は女性スタッフの多い職場です。
若い方も多く、動物や飼い主さんのために生き生きと一生懸命働いていて、訪問するたびに、「素敵な仕事だなぁ」と思います。

 

毎月のように妊娠のご報告をいただき、お名前だけで存じ上げていた方がグッと近くなったようで、嬉しく感じるものです。

ぶれすでは、妊娠されたスタッフの方向けに産育休のスケジュールから給付金の見込額、入金時期といった資料を作成して、ご案内しています。
給付金の見込額や入金時期を早めに知ることができるので、予定を立てやすくなると好評をいただいております。

 

 

さて、動物病院という職場は、レントゲンや薬剤を扱う、動物から噛まれたり、猫からのトキソプラズマ感染など、妊娠したスタッフにとっては不安を感じることが多い職場かもしれません。

以前は、動物病院では、妊娠を機に退職したり、パートになったりといったケースが多くありましたが、ここ最近は勤務を継続できるように環境が整えられたきたと実感しています。
事業主の方から、妊娠スタッフへの配慮など必要な措置を熱心にご相談をいただきますし、実際に働き続けらるよう、病院全体で取り組んでいらっしゃるところが多いです。

仕事の性質から、すべての業務から外れてデスクワークというのは難しいのですが、妊娠したスタッフの方いたらどのようなことに気をつけるべきでしょうか。

 

👶スタッフから妊娠報告がありました。まず何をすればいいですか?

まずは、予定日を確認しましょう。母子手帳があればコピーを提出してもらいます。
予定日がわかったら、産休に入るスケジュールを作成します。
産前休業:出産予定日の6週間前から
産後休業:出産後8週間
育児休業:産後休業後~1歳誕生日の前日まで

双子以上の場合は産前産後休業の期間が変わります。
厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」でもシミュレーションできます。

スケジュールを作成したら、産休育休の制度、給付金、社会保険料の取り扱いなどについてご本人へ説明します。
定期的に面談して今後の予定などを相談しましょう。

👶どんな配慮をすればいいですか?

妊娠初期は心身ともに不安定な時期です。
検査を受ける時間の確保などをします。

★本人の申請に基づき
 ◆保健指導・健康診査の受診に必要な時間の確保

★医師等から指導事項がある場合  
 ◆休憩時間の延長や休憩回数の増加
 ◆交通手段や通勤時間の変更  
 ◆勤務時間の短縮変更  
 ◆危険有害業務の就業制限
 ◆軽易業務への転換

医師等からの指導事項の確認は、口頭ですと的確に伝わらない可能性がありますので、「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用してもらいましょう。

母性健康管理指導事項連絡カード」は、医師などからの指導事項を適切に把握できます。

妊娠された方が主治医や助産師などに依頼して記入してもらうものです。

👶危険有害業務って何ですか?動物病院では何が該当しますか?
重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所など、「女性労働基準規則第2条」に定められている24業務です。

これも「働く女性の心とからだの応援サイト」に見やすい表がまとめられています。

ボイラー?クレーン?あれ?動物病院では該当しそうなものがない…?
レントゲン撮影などは??

レントゲン撮影などの放射線業務は、「電離放射線傷害防止規則」という法律で、被ばく量の限度が定められています。
動物病院では放射線パッチなどで常時計測されていると思いますので確認しやすいと思います。
一 内部被ばくによる実効線量については、1mSv(一ミリシーベルト)
二 腹部表面に受ける等価線量については、2mSv(二ミリシーベルト)

ただ、人数が少ない職場で、完全に避けるのは難しいところがあります。
防護エプロンを正しく使用してた線量が 1mSvを超えないように注意しましょう。

危険有害業務に該当していませんが、トキソプラズマに感染したことがない方の場合、猫からのトキソプラズマの感染も対策が必要です。
可能なら他の人が代わってあげる、必要なときは糞尿の清掃時のマスク手袋の徹底など、特に注意しましょう。

👶どんな準備をしておけばいいですか?
妊娠中は体調が不安定で、人によっては次のようなことがあります。

・遅刻や早退、欠勤などが増える
・椅子に座る時間が増える
・トリミング中など椅子を使うことが増える
・大型犬や暴れる犬の保定やトリミングができない
・トキソプラズマに感染したことがないので猫の対応は避けたい
・散歩や送迎など一人での外出は控えたい
・体調によって作業の途中で休憩したりする可能性がある。
・シャンプー台の高さなどによっては難しくなる

早めに本人と話し合っておくようにしましょう。
職場で対応しきれないこともありますが、代替要員の採用や他の方が業務を代替できるように共有するなど、仕事の内容や進め方を見直す機会にもなります。


👶制限が多すぎて仕事が与えられない。。。
妊娠中に限らず体調不良の状態は個人差が大きく、これくらいなら大丈夫と他人が安易に言えないところがあります。
配慮する側としては、あれもできない、これもできないと言われたような気がして、萎縮してしまうことがあるかもしれません。

個人差が大きいだけに、ご本人がどの点に不安を抱えているのか、職場ができること、できないことなどを伝えましょう。
業務の制限が必要な場合は、先ほどの「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用してもらいましょう。

 

👶妊娠中のスタッフの業務が他のスタッフがカバーして不満が。。。
簡単に配置転換ともいきませんし、すぐに代わりの人を採用できるものでもありません。
妊娠に限らず病気や介護など、思い通り働けない期間がある、お互い様という雰囲気作りが重要です。
とはいえ、今、頑張ってカバーしてくれているスタッフの方に、何かしら報いるものがあってもいいと思います。
業務代替手当など、一時的な負担に対して手当を支給するケースもあります。

👶パートになってもらってもいいですか?
妊娠を理由として雇用形態を一方的に変更することは、男女雇用機会均等法9条3項で禁止されています。
ご本人の希望でパートになるケースは差し支えありませんが、出産手当金や育児休業給付金などが減る可能性もあります。
制度について丁寧に説明しましょう。

 

👶お休み中、給与が出ない間の補償や保険料ってどうなりますか?

社会保険に加入している場合、産前産後休業期間(出産手当金)と育児休業給付金(育児休業中)が支給されます。

保険料は届出をすることで、事業主、本人ともに免除され、免除された期間は納付されたものとして取り扱われます。
産前産後期間、育児休業期間、出産日が予定日とずれて変更した場合、復帰した場合、それぞれ届け出があります。

この手続きは会社が行うものとなりますので忘れないようにしましょう。

👶いつから休む必要がありますか?またいつから復帰できますか?
お休みは次のように分かれています。
①産前休業:出産予定日の6週間前から
②産後休業:出産後8週間 ・・・ 
③育児休業:産後休業後~1歳誕生日の前日まで

①の産前休業は、本人から申し出があった場合にお休みとなります。
②の産後休業期間は、本人が希望しても必ず休まないといけない期間です。
ただし、6週間経過後は、医師の許可があれば勤務可能です。
③の育児休業とは、お子さんの養育のためのお休みで、保育園に入れなかった場合など、最長で2歳まで取得できます。

復帰のタイミングは保育園が決まるかどうかが重要です。

先週の村田先生のブログ「保育園の4月入園は申込時期をご確認ください!」が参考になります。

さて、こんなにやることがたくさん、人数が少ない職場ではやりきれない~という声が聞こえてきそうです。
喜ばしいことの反面、どうしよう、、、といった不安も抱えらえると思います。
周囲の負担やモヤモヤも、みんなで助け合い…は綺麗ごとになってしまうでしょう。
少し前ですが、研究者の富永京子さんが、育休を取るのが怖かったという記事が話題になったりもしました。

 

法律だから~とくくれない問題で、だからこそ会社も妊娠したスタッフも真摯に話し合うことが大切です。
モヤモヤも不安もちょっとした行き違いから、深刻に考えがちです。
いろいろなご相談を伺っての実感は、法律はこうですという話より、コミュニケーションがしっかりとれることで、大半のことは解決していくように思います。
山下先生のブログ「“察してほしい”をやめてみる」も参考になりますのでぜひご覧ください。

 


社会保険労務士法人ぶれすは、経験豊富な社労士が「働きやすい会社づくり」を全力でお手伝いいたします。

ご相談窓口はこちら>>>

こちらの記事もおすすめ