こんにちは。特定社会保険労務士の延島です。
本日は第1回愛玩動物看護師国家試験の合格発表です。
合格した方も残念だった方も、まずは1年間お疲れ様でした。
合格者の方は免許登録手続きをして、愛玩動物看護師として業務の幅を広げて頑張ってください。
残念ながら今回は不合格だった方、私も社労士試験に1回で合格していません。
仕事も忙しいし、また落ちたら辛いなど、もう受験するのはやめようかなと思うこともありましたが、国家資格は自分のキャリアを証明してくれるもの。
いまは来年のことは考えられないかもしれませんが、ぜひ諦めずにトライしてください!
さて、「変形労働時間制」という言葉は聞いたことがありますか?
1ヶ月、1年といった期間を限定して、働く時間を調整する制度です。
労働基準法は、1日8時間、週40時間を超えたところは、時間外労働となります。
ただ、業種によっては、平日は勤務時間が長めだけど、日曜祝日は午前中のみといったところがあります。
動物病院でも多い働き方ではないでしょうか。
例えば、次のように勤務してもらいたい場合、1週間40時間となっているので、時間外労働はどうなるでしょうか。
1週間の合計が40時間なので、これなら残業は発生しないと考えていないでしょうか。
実は、このような働き方が「変形労働時間制」です。
ただし、注意点があります。
まず、第1に「変形労働時間制」とするには、就業規則か労使協定で定めておくことが必要です。
労働基準法の原則は、1日8時間労働です。
勝手に「変形労働時間制」とすることはできません。
必ず就業規則か労使協定で決めておくこと、場合によっては労働基準監督署への届がないと、無効になります。
単純に、9時間のシフトと4時間のシフトがある、だけでは足りないのです。
この手順をきちんとしておかないと未払残業となるリスクがあります。
当事務所でも、1ヶ月の労働時間は少ないのに、1日8時間を超えている部分を未払残業を請求された、というご相談をいただくことがあります。
変形労働時間制は、1年間で勤務時間の長い月、短い月で調整する「1年単位の変形労働時間」と、1ヶ月のなかで調整する「1ヶ月単位の変形労働時間制」があります。
ここでは、「1ヶ月単位の変形労働時間制」について説明します。
それでは、導入手順です。
①次のルールを決める
対象労働者を決める
獣医師の業務、看護の業務など、具体的に対象となる職種など範囲を決めておきます。
対象期間と起算日を決める
対象期間は1ヶ月以内、起算日は給与締日に合わせます。
例えば、給与の締日が末日の場合は、このようになります。
例:毎⽉1日を起算日とし、1か⽉を平均して1週間当たり40時間以内とする。
勤務時間のパターンを決める
まずは勤務のパターンを決めましょう
<勤務パターン例>
【シフト①】8時半~18時半(休憩1時間) 9時間労働
【シフト②】 8時半~4時半(休憩なし) 4時間労働
労働日ごとの勤務パターンを決める
先ほどの起算日は毎月1日ですので、1日~末日までの期間で、日ごとの労働時間を決めます。
平日が9時間、日曜日が4時間など決まっていればいいですが、シフトを組んで決めていくときは、「起算日の1週間前に定めて通知する」などとし、従業員さんがわかりやすいことが重要です。
有効期間を決める
頻繁に変わるものではないので、1年~3年以内にくらいにしておくといいでしょう。
②就業規則か労使協定に記載する。
10名以上の場合は、就業規則を労働基準監督署へ届け出が必要です。
③従業員の方へ説明、労働契約書など書面を配布します。
制度としてはこれで導入できましたが、従業員さんが理解していることは大事です。
労働契約書などにしっかりと記載しておきましょう。
残業代をもらっていないなど、誤解から不信感につながると嫌な空気になりますね。
④実際にシフトを組んでみる
1ヶ月を平均して40時間になるようにシフトを組みます。
平均して40時間の計算になっているかは、シフトが上限時間内に収まっているかどうかで判断がきます。
というとちょっと複雑そうですが、歴日数によって次のように上限時間が決まっています。
例えば、3月は31日あるので177.1時間まで、4月は30日なので171.4時間まで、ということになります。
1ヶ月というのは、①で決めた起算日から1ヶ月で、例の場合は1日~末日です。
この期間のシフトを組み、合計労働時間が上限に収まっていればOKです。
★注意点
勤務パターンはあらかじめ決めておき、事後に調整することはできません。
例えば、昨日は忙しかったから10時間、今日は暇だから6時間で帰っていいよーなど、結果として週40時間にする、ということはできません。
さて、シフトはこれでOKになりました。
給与計算方法は?
それでは、給与計算はどうなるでしょうか。
残業時間になる部分を正確に集計する必要があります。
厚生労働省のサンプルをみてみましょう。
???となっていませんか・・・。
このサンプルが複雑なのは、勤務パターンを超えたところは時間外労働だけど、割増率は必ずしも1.25ではなく、1.0でもいい日があるよというパターンも説明しています。
また、1日ごとの時間外労働だけでなく、1ヶ月の上限を超えてしまった部分も時間外労働ですよ(⑤)ということで、とても複雑に見えますね。
基本的な考え方として、1日ごとに勤務パターンを超えた時間が時間外労働です。
さらに、シフト組んだ時にもしも1ヶ月の上限に収められていないときは、その部分も時間外労働になりますよ、という点を頭にいれておきましょう。
時間外労働の集計はちょっと複雑になりますので、勤怠システムを導入し正しい設定が必要です。
ぶれすではクラウド勤怠システムの導入設定や、変形労働時間制を導入した場合の給与計算などもサポートしています。
変形労働時間制は、業務の繁閑に合わせることができるので、動物病院やサービス業にお勧めの制度です。
ぶれすの顧問先でも、変形労働時間制を使って1日10時間労働、週休3日制の動物病院が少しずつ増えてきました。
従業員さんの評判もよく、時間外労働の削減、採用、定着に効果が出ていると実感しています。
ぜひご相談くださいね。
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