社会保険労務士法人ぶれす

2023.06.02

【動物病院で多いご相談】②少人数でも就業規則は必要?

こんにちは。特定社会保険労務士の延島です。

6月になりました。
本日は雨模様の地域が多いですね。
首都圏は電車にも影響がありそうです。
交通情報にご注意くださいね。

さて、動物病院で多いご相談、就業規則についてです。
就業規則は常時10名以上の従業員がいる事業場では、作成して労働基準監督署へ届出の義務がありますが、10名未満でも作ったほうがいいでしょうか、または作りたいというご相談があります。

 

それには、就業規則は何が書いてあるか知る必要があります。

就業規則には次の内容を記載します。

(1)絶対的必要記載事項
法律上、必須の事項で、就業規則に必ず記載するものです。
勤務時間、賃金、解雇、退職など

(2)相対的必要記載事項
制度がある場合は記載しないといけない事項です。
退職金、従業員が負担する費用がある場合(作業用品など)、安全衛生、教育、表彰、制裁など

(3)任意的記載事項
就業規則に記載するかどうか自由な事項です。
会社理念、服務規律(就業上のルール、身だしなみ、報連相など)、休職制度、採用手続き、異動(配置転換)など

 

この3つの内容を盛り込んで作成するわけですが、就業規則本則と賃金規程など分かれていることがあります。

構成には決まりはありません。
絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項が記載されていれば、まとめて就業規則に書いてもいいですし、別規程にしてもいいものです。

ただ、賃金や育児介護休業に関すること、パートタイマーの方の規程などは、分けておくほうが、その後の更新もしやすいですし、条文を探しやすいと思います。
そのため、ぶれすでも、就業規則+賃金規程+育児介護休業規程+パートタイマー規程で作成することが多いです。

 

それでは就業規則を作るメリット、デメリットを考えてみましょう。
【メリット】
①ルールをはっきりさせることができる
例えば、休日はいつか、年末年始や夏休みがあるか、欠勤や早退したとき、残業の計算方法、賞与の有無など、
はっきりさせることにより、運用しやすくなりますね。

労働条件や服務規律など会社のルールが明文化することで、トラブルの防止につながりますし、指導する際の根拠にもなります。

②変形労働時間制を導入できる
以前にブログでも書いた変形労働時間制は、就業規則または労使協定で定めておく必要があります。

③労働環境を充実して他社と差別化できる。
例えば、長期休暇制度や慶弔見舞金、社割や退職金などの福利厚生は、法律上は無くても問題ありません。
法律を超えた制度を就業規則に定めて導入することで、他社と比較して労働条件がよくなり良い人材確保につながります。

④事業主の想いを伝えることができる
福利厚生が充実していれば、従業員を大切にしていると感じますし、服務規律で禁止事項やはっきりしていれば、会社が期待する人物像が伝わります。

【デメリット】

①専門家に依頼する費用がかかります。
②法改正があるので定期的にメンテナンスが必要です。
③一度決めた条件を変えるときは不利益変更になる可能性があり、同意が必要です。
④周知していないと効力はありません。

 

もっともデメリットに感じるのは費用負担だと思います。
それでは費用の問題が解決できれば、10名未満の事業場でも就業規則はあったほうがいいのでしょうか。

 

結論から言いますと、就業規則はトラブル防止にはなりますが、課題の解決にはならない、ということです。

就業規則を導入すれば解雇できる、懲戒処分ができる、給与の減額ができるという考え方や、退職まで●ヶ月前に申し出する、有給は●ヶ月までに申請など、行動を制限できるかといったご相談をいただくことがあります。
1面では正しいですが万能ではありません。
懲戒処分や解雇は合理的な理由や要件がありますし、退職や有休利用について過度に制限をすることも認められません。
就業規則に書いてあったとしても、違法な内容の就業規則は無効になりますし、また周知して従業員さんが知っている状況にないとこれも効力がありません。

それでは、結局何のため、、、となりますよね。
万能ではないことを理解したうえで、費用をかけて導入するのは何のためか、ということを考えていただくことをお伝えしています。

もしも従業員さんの行動に問題を感じていることが発端なら、何よりも大切なのは日常のコミュニケーションです。(こちらもご参考ください。「記憶にございません!」)
普段、注意していないのに、ある日突然、就業規則に書いてある服務規律を守らない!と言っても、何も解決しません。
退職やお休みの取り方についても、人間関係や仕事が共有できていることが、何よりの予防策です。

それでもルールが明確になることは、働く側にとっても事業主側にとってもメリットがあることは間違いありません。
開業当初や人数が少ないときは、就業規則を作成するよりも、まずは労働契約書を作成して、そこにしっかりとルールを書きこんでおくことをお勧めしています。

形を作ることは大切ですが、理解してもらう働きかけが重要です。

 


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