
社会保険労務士の加藤です。
天候だけでなく、社会全体に何か不穏な感じが蔓延しているような気がするのは、私だけで しょうか?そんなときに、やはり”不穏”な映画を観てきました。
『敵』
主人公の儀助は、大学教授をリタイアした後、落ち着いた日本家屋(中野弥生町?)に独り暮らししています。生活の隅々まで計算し尽くし、残り時間がつきたところで自死までも予定に入れています。
この主人公の振る舞い方、いちいち理解でき、頭が勝ったというか理性で欲を抑え込んで人生を送ってきたのだろうと推測できます。老いてもマイペースを崩されたくもなく他人に頼るのも嫌で、かつわがままを言える唯一の他人にも先に逝かれた老人が、残り時間をどう過ごすか、という淡々とした映画かなと途中まで思っていました。それか、『ファーザー』のように痴呆がだんだん進んでいくのか、と。ただ、前情報入れずに観に来たけど、原作筒井康隆だし…
そこから『敵』がやってくる。
PCにいきなりメッセージが流れてくる。離婚目前のかつての教え子の美女やバーのバイトの女子大生との関係。あげくには死んだ妻まで。(妻の昔の服をタンスから引っ張り出して、掛けて臭い嗅ぐところなんかはどうも💦)
本人の妄想と絡み合って物語は進んでいきます。
感想は、「死のその時まで人は過去に囚われる」ということ。
過去の行動や不作為、発した言葉や受けた言葉、家族や知人の死、等々。人は時間を持て余すようになると、それらの記憶が逃れようもなく、いきなりフラッシュバックしてきます。おそらくそこから逃れようとして、ある人たちは年を取ってから、筋トレしたり金髪にしたりして、無理矢理現在を生きようとするのではないでしょうか(誰のことだ)。
生ききるというのは難しいですね。
鑑賞後すぐに読んだ原作にほぼ沿った作品でしたが、60歳の筒井康隆が想像した77歳の生活が一つのリアルだと実感させられました。
監督は吉田大八。現在の邦画の監督の中でも信頼できる一人です。
『桐島、部活やめるってよ』 は、ミレニアム以降の邦画の中で個人的に三つ挙げろと言われれば、入れると思います。ただし、この映画とどちらがと言われたら、自分の歳もありこちらを取るかもしれません。義助役の長塚京三も良いですが、3人の女優(瀧内公美、河合優実、黒沢あすか)の演技が素晴らしいので、是非映画館で観てみてください。
社会保険労務士法人ぶれすは、経験豊富な社労士が「働きやすい会社づくり」を全力でお手伝いいたします。