社会保険労務士法人ぶれす

2024.05.31

「成長したい」人ばかりではない? ~成長志向と成長実感~

こんにちは。社会保険労務士の山下です。

近頃、近所の小学校や保育園から運動会練習の元気な声が聞こえてきます。

私は学生のころ、ずっと文化部で体育の授業以外、スポーツとは無縁の生活を送っていました。とくに球技なんてまるっきりダメ、典型的な運動音痴タイプです。

 

そんな私ですが、10年前からランニング、最近はジムでの筋トレが習慣です(花粉の季節はサボり気味ですが・・・)。

運動嫌いな私がランニングを始めたきっかけは、どこかで読んだiPS細胞研究所の山中教授のインタビュー記事です。当時、すでに50歳近かった山中教授がマラソンを続ける理由として

「この歳になると身体は衰える一方だけど、ランニングを続けていると先月より今月、去年より今年、必ず成長が感じられる。努力が必ず報われる感覚があるし、それが楽しい」というようなことをおっしゃっていました。

これを読んですっかり感化され、試しに近所でも走ってみようか、となったのが始まりです。

 

運動習慣が0だった私でも、継続していると 「前まではこのあたりで心拍数がすごい上がっていたのに、いまは平気になったな」とか、「〇〇キロのレッグプレスが軽く感じるようになった!」などなど、”過去の自分と比べての成長”を実感できるようになりました。

 

どんなにささやかでも、自分の成長や変化を実感すること。

仕事をする上でも、「成長の実感」は職場定着や、モチベーションにも大きな効果がありそうです。

 

「そんなこと言ったって、”成長したい”という人ばかりじゃない。現状維持でいい人だってたくさんいるでしょう」という声が聞こえてきそうですが、成長「実感」の効果は、「目指す」ことのおよそ3倍という調査結果があります。

 パーソル総合研究所  成長「実感」の効果は、「目指す」ことのおよそ3倍 ~成長実感と志向の効果比較~

この調査の中で、

①「働くことを通じた成長をどれくらい重要だと思っているか(志向しているか)」

②「日々の仕事のなかで成長を実感しているか」

を聴取した結果、10代~60代のどの年代でも80%ほどの人が”成長は重要と考える(=成長を志向)”と答えた一方、②の成長を実感しているかについては10代の70%をピークに、高齢になればなるほど下がり、男女差があるものの40代以降は50%を割り、成長志向と実感に大きな乖離があるのがわかります。

 

では、成長「志向」と、成長「実感」、どちらが仕事への意欲や就業満足度、パフォーマンスに影響を与えているのでしょうか。

図3.png

 成長実感と成長志向の影響度(出典:「働く1万人成長実態調査2017」パーソル総合研究所)
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201711011100.html

このグラフを見ると、成長「志向」よりも、「実感」の方が、極めて高い影響度となっているのがわかります。

つまり、

「成長したいと思っているかどうかより、成長を実感できることが大切」。

何か特別なインセンティブを用意して”成長したい”と思わせようとするよりも、「日々着々と業務に取り組んでいたらいつのまにか成長していた」それが実感できるので十分効果がありそうです。

 ”自己成長? あまり興味ないです” という人でも、「実感」があれば仕事への意欲が高まる、そこまでいかなくとも、会社を辞めたい、転職したい、となるのを防止する一手にはなりそうです。

 

次に、「成長を実感する」というのは、具体的にどういうことでしょうか。

「お給料が上がった」「役職があがった」といった、”成長を評価された結果”はもちろんのこと、

そこまでいかなくとも「〇〇(具体的な業務)が、すごくうまくなりましたね」とか、「手際よくなりましたね」、「〇〇してくれて助かりました!」など、具体的なフィードバックは成長実感につながるのではないでしょうか。

 

ここでもう一つデータを。

一般社団法人日本能率協会が実施した「2022年度新入社員意識調査」

この中で

「自分たちの意欲や能力を高めるために、上司や人事へ期待することは何ですか」という設問に対し

堂々の1位は「成長や力量に対する定期的なフィードバック」であり、「ワークライフバランスをとれる柔軟な働き方ができる環境づくり」を上回りました。

 

最近読んだ本の中に、効果的なフィードバック例が載っていました。

静かに退職する若者たち

静かに退職する若者たち | 金間 大介著 | 書籍 | PHP研究所

①フィードバックはなるべく早く

②フィードバックを返すポイントは具体的に

③誉め言葉は「私」を主語とした形に

④軽めのフィードバックを頻度高めに

効果的なフィードバックというのは、むやみやたらに「誉めて伸ばせ」というのとは違い、「具体的に」というのがポイントになりそうですね。

 

いかがでしたでしょうか。評価面談や1on1を制度として整え実施するのはなかなかハードルが高いかもしれませんが、「フィードバック」ならすぐに取り入れられるとは思いませんか?


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