社会保険労務士の山下です。
急に訪れた今週の春の陽気・・・重度の花粉症である私にとっては、厳しい一週間となりました・・・。
でもやはり、冬から春にかけて暖かくなってくる季節、なんだかワクワクするものですよね。
春と言えば、新しい職場で心機一転、という方も多い季節です。
本日は、有期雇用の方を正社員化して申請できる助成金 「キャリアアップ助成金~正社員化コース~」について解説していきます。
先輩の経営者から「有期雇用の従業員を正社員にするだけでもらえる助成金があるから、申請しないともったいないよ」
と聞いて、自分の会社でも、申請したいのですが・・?
というお問い合わせをいただくことがあります。
たしかに・・・たしかに「昔は」そうでした・・・・(いい時代でしたね・・・)。
6か月有期契約をして、そのあと正社員にして6か月たつと、申請可能。そういう時代も確かにあったのですが、
その後、様々な変遷をたどります。
平成30年 「正社員にしたあと、5%の賃金UPが必要(条件によっては賞与も含めることができる)」
↓
令和3年 「正社員にしたあと、3%の賃金UPが必要(賞与は含まない)」
↓
令和4年
①「転換後の正社員とは昇給があって、かつ賞与か退職金がある者」
②「転換前の有期雇用従業員は、正社員と違う賃金の額・計算方法で雇用されている者」
③「社員にしたあと、3%の賃金UPが必要(賞与は含まない)」
一番インパクトが大きかったのが、令和4年の改正です。
ここで確認しておきたいのが、「正社員」というのはどういう人たちを言うのか?という問題です。
「正社員」という言葉は、労働基準法はじめ労働法で定義されているものではありません。
一般的には、フルタイムで、定年まで働く(つまり無期)という方を思い浮かべると思います。
令和4年の改正前、本助成金でいうところの「正社員」の定義も、ほぼ各会社に委ねられていたため、
「うちの会社は正社員でも賞与も退職金もない」という会社であっても(他の諸条件がそろえば)助成金は申請可能でした。
なので、開業したてで、「まだ賞与や退職金を就業規則に書くほどはっきりとは決められない」というステージの会社さんにもお勧めができる助成金でした。
ところが、令和4年の改正で、
「正社員とは、昇給があって、賞与か退職金がある者」
と限定されたのです。
また、令和4年以前は転換前の働き方も「有期」であればよかったので、試用期間的な意味合いで6か月を有期、そのあと正社員転換試験にチャレンジする、という運用も可能でした。
それが、令和4年以降はただ「有期」であるだけではダメで、「正社員とは明らかに違う雇用形態」が求められるようになりました。
たとえば、
【正社員】は月給制、賞与は◎◎円、昇給幅は◎~◎、手当は~
【契約社員】は時給制、賞与は〇円、昇給幅は〇~〇、手当は~
といった具合です。
「なんだ、じゃあ、契約社員のときに賞与や手当をつけなければいいのでは?」
と思うかもしれませんが、ここで出てくるのが「同一労働同一賃金」問題。
同一労働同一賃金とは平たく言うと「同じ仕事内容で、責任の範囲、配置変更の可能性も同じなら有期やパートだからといって、賃金に差をつけないでくださいね」というものです。
逆にいうと、正社員と契約社員で明らかに仕事内容や責任の差があり、それを明確に説明ができるのであれば、その分、賃金の差をつけることには問題はありません。
以上のことを踏まえ、私が描く「キャリアアップ助成金~正社員化コース~」の活用イメージとしては、
・業界未経験者が転職してきて、いきなり正社員は双方不安なので、責任や業務の範囲が正社員よりも狭い「契約社員」という働き方を選択する・業務に慣れてきて、仕事も正社員同等の内容にチャンレジ→正社員へ |
もしくは、最初は子育てのためフルタイムではなくパートで入社してきた方が、子育てがひと段落したため、フルタイムの正社員に、といったケースもあると思います。
正社員になることで、キャリアも待遇もUP。
これぞ、「キャリアアップ助成金」の本来の趣旨にぴったりと当てはまるのではないでしょうか。
※令和5年11月29日以降の正社員転換については、さらに改正があり、申請が2期制(正社員になってから6か月、12か月経過後)となります。助成金額も、一人57万円から、80万円(1期につき40万円×2)。
実際には、もっと細かい要件がいくつもありますので、「キャリアアップ助成金にチャレンジしてみたい」という場合は、ぜひ事前にご相談ください。
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