特定社会保険労務士の加藤です。
先日、『遠いところ』 https://eiga.com/movie/97282/ という映画を観てきました。
舞台は沖縄、幼い息子とDV夫と暮らす17歳の主人公が、現実に直面する姿を描いた作品です。主人公の演技も凄かったですが、DV夫のリアルさがなんだか刺さりました。
ただ、映画のある場面で、職業柄か冷静になったところがあります。中盤、主人公アオイが、昼職に就きたいと食堂?に面接に行ったところで、「時給792円(撮影があったR2年)でまともに働いても月8万、2ヶ月もらえない」と、親友の海音に言われていました。
となると、ざっくり時給800円として月100時間で8万、食堂だから昼間5時間くらいなんだろうな、と。ただ、そもそもいま金がいるわけで、当月末締め翌月末払いじゃあその間生活どうするんだ?最低賃金の水準を是正するのはもちろん、行政が援助するのはそこだろうと思いました。
さて、やっと本題ですが、給料額どう決めていますか?です。
大卒や高卒初任給の水準でしょうか?税理士に言われてこのくらいだろうという感覚でしょうか?でも、本人がもらう手取りから考えたことはあまりないと思います。いくらあれば生活できるかという観点から(特に昨今の物価上昇を考慮すると)設定する視点が必要だと考えます。
東京一人暮らしで考えてみます。
・家賃 8万(SUUMOサイトより https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chintai/fr_single/hitorigurashi_yachinsouba/)
・食費 4.5万(今の物価高で自炊無理だと、1日1000円はきついかと)
・水道光熱費 1万
・通信費 1万
・生活用品、被服費 2.5万
・娯楽費 2万
で計19万、20万あればなんとかいけるかなというところでしょう。(ただし貯蓄は無理)
そのうえで、当然最初の給料振込日までの生活や賃貸契約費用などは持ち出しですし(今はみんながみんな親が出してくれないでしょう)、これらほぼ消費されるので、10%の消費税がきっちりかかっています。
さて、手取り20万円で逆算してみます。(動物病院で試算します)
手取り 200,614円
所得税 4,980円
健康保険料 12,000円 (5%、会社負担 12,000円)
厚年保険料 21,960円 (9.15%、 〃 22,824円 こども拠出金含む)
雇用保険料 1,446円 (0.6%、 〃 3,012円 労災保険料含む)
給料額 241,000円
となります。
会社にとっては、37,836円余計に払うので、278,836円が固定人件費です。さすがに新人に28万弱払うの?無理でしょという感覚になるかもしれません。これですぐ辞められたりしたら目も当てられないでしょう。
ただし、本人にとっては、ギリギリの給料しかもらっていないのに、慣れない仕事で忙しくストレス溜まりまくりでもうムリ!と思っているかもしれません。ましてや、1年2ヶ月経った来年6月になると住民税10%がかかるのでざっくり1万円手取りが減ります。ですから、仮に来年4月に1万円昇給しても、社会保険料負担合わせると手取りが入社時より減ることになります。(ちなみに負担率は、欧米基準で会社負担も含めると、健保10%、厚年18.3%、雇用労災1.85%、所得住民税で10%くらいで計40.15%、消費税入れると五公五民超えですね💦)
経営者にとっては、なかなかお客さんに価格転嫁も出来ないし、最低賃金(また別に書きます、誰かが...)に合わせるくらいでかんべんしてよ、というところでしょうが、いくら給料を払えば社員が生活できるか?という視点から考えてみてはいかがでしょうか。
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