社会保険労務士の山下です。
このお仕事をしていると、事業主さんはもちろんのこと、従業員さんからご相談いただく機会が多くあります。
そんなとき、どんな風に聴いたらよりよい職場の発展につながるか?
どんな風に聴いたらより本音に近い気持ちを聴かせていただけるか? ということを考えるようになり、
昨年の秋から半年間「産業カウンセラー」の資格を取得すべく、毎週 1回講習に通っていました。
カウンセリングの練習のために知人や同じ受講者同士で「職場での悩みやモヤモヤ」について話し合うと、
職業は違えど「職場のコミュニケーション」についての悩みが、なんと多いことか・・・・・。
相性の良し悪しはもちろんのこと、問題はそれだけではなく、コミュニケーションの方法にあるのではないか?
と、一つの仮説が頭に浮かびます。
コミュニケーションについて何冊か本を読む中で、「これかもしれない!」というものに出会いました。
それが「アサーティブコミュニケーション」「アサーティブトレーニング」です。
「アサーティブコミュニケーション」は、「自分も相手も大切にする自己表現」「さわやかな自己主張」を指します。
基礎を確立したアメリカの心理学者によると、自己主張の方法は3つあります。
①アグレッシブ
→自己主張ができるが、攻撃的で、相手の気持ちまで思いが至らないタイプ
②ノンアサーティブ
→相手の気持ちを尊重できる一方で、自分の意見や気持ちを抑え込む、またはうまく伝えられないタイプ
③アサーティブ
→相手の気持ちも尊重しつつ、自分の気持ちや考えを適切に自己主張するタイプ
カウンセリングの練習の中で感じたのは、①②の方が多いことです。特に、②はとても多いのではないでしょうか。
(②のタイプでずーっと我慢していて、ある日 突然①タイプで爆発!というケースもありますね。)
根本にあるのは日本人ならではの、「察してほしい」という気持ちだと思うのです。
たとえば、
「こんなに困っているのに彼(彼女)は手伝ってくれないのです」というご相談に対して、
「手伝ってほしいと掛け合ったことはありますか?」と質問すると
「いや、忙しくて困っていることくらい見ればわかると思うし、常識だと思うので口に出したことはありません。
私も、周りの人が忙しかったら自分から声を掛けますので・・・」
中には 手伝うべきとわかっていながら 声をかけない方もいると思いますが、
本当に手伝いを必要としていると気が付いていない、もしくは、具体的な方法がわからない、といった方もいるでしょう。
例をもう一つ。最近ミスが多い従業員に注意をすべきか迷っているとします。
ここで、「なにやってるの? 前も同じことしたよね?本当に気を付けて!」と一方的に言うのは「アグレッシブ」。
「ミスは多いけど、最近忙しいしなぁ・・・何度も注意するのは可哀そうかな・・・言わなくてもそのうち気が付いてくれるでしょう」と抑えてしまうのは「ノンアサーティブ」です。
「察してほしい」という気持ちをぐっとこらえて、自分の気持ちをアサーティブに表現するためには、
DESC(デスク)法を使います。
アサーティブに表現するなら、
1.Describe(描写する) 「いつも頑張ってくれているけど、最近、ミスが目立ちますね」
2.Express(説明する) 「実は、お客様からクレームが来ていて」
3.Suggest(提案する) 「原因で思い当たるところがあれば教えてもらえませんか」
4.Choose(選択する) 「状況を確認した上で、業務量を調整したほうがよければ一緒に考えましょう」
といった具合です。
・・・ですが、ちょっとこれ、覚えにくくありませんか? とっさに実行するのはちょっと難しいと思います。
そこで、DESC法を日本版に解釈した「みかんていいな」法も併せてご紹介します。
1.み (見たこと) 「最近、ミスが目立ちますね。実はお客様からクレームが来ていて・・・」
2.かん(感じたこと) 「いつも頑張ってくれている〇〇さんらしくないなと思ってます」
3.てい(提案) 「なにか原因で思い当たるところがあえば教えてもえらませんか」
4.いな(否定されたときの代案)「思い当たるところがないなら、ちょっと業務量や優先順位を一緒に確認してみましょう」
いかがでしょうか。
口に出してまでは言いたくない、できれば察してほしい、という気持ちになったとき、思い出していただければ幸いです。
余談で、職場でのことではないのですが・・・
子育てをする中で、アサーティブな自己主張ができる子になってほしいと思いつつも、私自身、親としては過剰に「察して」先回りしまうところがあるなぁと気が付きました。
「暑い~」→「エアコンつける?」とか
「おなかすいた~」→「おやつ食べる?」など。。
YES、NOで答えられるクローズドクエスチョンよりも、「〇〇してほしい」「〇〇をちょうだい」ときちんと表現するのを待つべきですよね。
今後は、以前にも増して「気が利かない母親」として接していこうと思います。
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