社会保険労務士の山下です。
6月に入り、来年度の新卒採用活動がピークを迎えている病院さんも多いのはではないでしょうか。
採用面接では、「これを聞いておきたいけど・・聞いていい?」と迷うこともあるかと思います。
今回は採用面接で「してはいけない質問」と対策について、ご紹介します。
そもそも、どんな人を採用するかは企業の自由のはず。
なぜ「してはいけない質問」が存在するのか?
職業安定法では「必要な範囲を超える求職者の個人情報を同意なしに収集してはならない」とされており、面接時に不適切な質問をすると、法律違反になってしまう可能性があります。
また、憲法で保障されている「基本的人権を尊重すること」にも関係してきます。
厚生労働省は、採用選考にあたっては「応募者の適性・能力に基づいて行うこと」としています。
参考:公正な採用選考の基本|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
「質問してはいけないこと」は大きく3点あります。
①本人に責任のないこと、本人の努力ではどうにもならないことに関する質問
・ご両親はどんなお仕事をされていますか?
・本籍地はどこですか?
・どのような家庭で育ちましたか?
令和3年度ハローワークに報告された「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、
「家族に関すること」の質問が約半数を占めているという統計があります。
面接の緊張を和らげるための雑談としても、家族や生育環境に関する質問は誤解を招く可能性があるため、十分に気をつけたいところです。
②思想・信条にかかわること
・信仰している宗教はありますか
・尊敬している人物はいますか
・愛読書は何ですか
・将来どんな人になりたいですか
これらは、思想信条を間接的に尋ねてしまうことになるため、NGとされています。
※「将来どんな人になりたいですか」あたりは、私が新卒時、就職活動をしていたときに何社からか聞かれた記憶があります(〇十年前の話です・・・)
応募者の職業観だったりモチベーションを計るためにする意図だったとしても、全般的な思想信条を尋ねられていると誤解を招かぬよう、
「どんな獣医師(看護師)になりたいですか」
「(業務に不可欠な)〇〇について勉強するときにどんな本を参考にしていますか」
など、具体的にしたほうがいいでしょう。
③男女雇用機会均等法に抵触するもの
・結婚の予定はありますか
・出産の予定はありますか
・(女性だけ、もしくは男性だけに)転勤には対応できますか、残業できますか
従業員(もしくはそのパートナー)の妊娠は喜ばしいことだけど、入社すぐに育休に入ってしまっては、業務に支障が出てしまう・・・
そのために、どうしても聞いておきたい。
そんな切実な事情もあると思います。
ただ、面接のときにその質問をして(注:本来してはいけない質問です)
「予定ありません」と答えてくれていたとして、
実際に入社まもなく育休に入ることになっても「話が違う」と責めることはできません。
それなら、面接のときに「これは年齢や性別に関係なく皆さんにお伝えしていることなのですが、当社では育児休業を勤続1年以上経過の方に限定する労使協定を結んでいます」と伝えることで、求職者の方とのアンマッチを防げるのではないでしょうか。
※1年未満勤続の方を除外するためには、適法に労使協定を結ぶ手続きが必要です。
今回ご紹介した「質問してはいけないこと」以外にも、実際にはいろいろ聞いておきたいことが出てくると思います。
「あれ、これ聞いてもいいのかな?」と思ったときは
「(業務の遂行や選考に必要な)〇〇のためにお尋ねするのですが~」
と、その質問をする理由を考えてみて、実際にその理由を口にするのがためらわれる、もしくは採用選考に必ずしも必要な理由を思いつかないときは 質問するのを避ける。そんな基準で質問内容を検討するのはいかがでしょうか。
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