社会保険労務士法人ぶれす

2023.01.06

濃厚接触者の待期期間を超えて出勤を控えてもらいたいときは?

社会保険労務士法人ぶれすの代表の延島です。

コロナの感染者が引き続き増えており、私たちの顧問先でも陽性や濃厚接触者に該当した方の連絡を多くいただいております。

今回は濃厚接触者の方の待期期間の取扱いと、待期期間を超えてお休みを要請できるのか、という点についてお伝えします。

濃厚接触者に該当した場合、陽性判明者と最終接触があった日を0日として翌日から5日間(6日目解除)の外出の自粛(自宅待機)と健康観察が求められています。

待機中は職場への出勤を控える必要がありますが、この期間のお給料はどうしたらよいでしょうか。
不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たりませんので、事業主の方に賃金の支払い義務はありません。

不可抗力とは次の2つの要件をどちらも満たすこととされています。
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

①については、濃厚接触者で外出自粛となることは、外部要因ですでので該当します。
②はどうでしょうか。「最大の注意を尽くし」とはなかなかの表現ですが、
在宅勤務などの方法により就業できるように検討することが求められています。
動物病院や医療介護事業、小売店や飲食業など、直接かかわることが必要な事業ですと、実際のところ難しいのが現状ですね。

①と②の要件を満たせば、事業主の方に賃金の支給義務はありません。
その場合は従業員の方は、有給休暇か欠勤を選択いただくようになります。
欠勤の場合はお給料が減額してしまいます。
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、そのような場合に約6割まで給付する制度ですので活用されるとよいでしょう。

それでは待期期間を超えてお休みしてもらいたいという場合はどうでしょうか。
待期期間は原則5日ですが、現在は、2日目及び3日目に、「体外診断用医薬品」と表示された抗原定性検査キットを用いた検査で陰性が確認できると、5日から短縮して3日目から解除となり出勤することができます。
たった3日間では本当に感染していないか分からない、職場でクラスタになったらどうしようなど、人数が少ない事業所でしたら切実な問題ですね。
そのため、本人から出勤したいと言われたけれど、職場としては原則の5日間休んでほしいというケースがあります。

待機を超えてさらにお休みを求める場合は、①と②を満たさないため、「使用者の責に帰すべき休業」となり、労働基準法第26条(休業手当)により平均賃金の100分の60以上の手当を支払う必要があります。

待期期間が完了して体調も問題ないのだけど、職場としては心配なのでもう少し休んでくださいと、事業主さんが依頼する場合は、上記の休業手当を支給することとなります。

従業員さん側としては、出勤できる状態なのに給与が6割となるとなかなか納得し難いようです。
特別休暇として全額給与を支給するケースもありますが、一方で陽性の方は欠勤控除になるのに…といったバランスを欠く面もあり、一概に支給すればみんな納得!とならないのが悩ましいですね。

当事者の従業員さん、その他の従業員さん、それぞれの事情や不安などがありますが、事業継続も含めて安心して働けるようにという気持ちがあるからこその悩みです。
意図を丁寧に説明してご理解いただくことで、労使でよく話し合って気持ちのすれ違いを防ぐ事が重要です。

 


厚生労働省の「新型コロナウイルス最前線」「労働者を休ませる場合の措置」「新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報」もご参考ください。

待期期間の考え方については、埼玉県のホームページが比較的分かりやすいです。


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