社会保険労務士法人ぶれす

2023.04.28

失われた30年~労働環境から考える(2)

社会保険労務士の加藤です。

 

先日、「パリタクシー」という映画を観てきました。https://eiga.com/movie/98840/

ネタバレを避けて一言で言えば、タクシー運転手と乗客である老婆の話ですが、江戸落語のような趣きで、観終わったあと気持ちが暖かくなる良作でした。序盤、タクシー運転手の仕事がわかるところがあり(そこはネタバレいいですよね)、おそらく個人事業主、車は自分持ちだし、保険やメンテなども自分でなんとかしなければならない。週6112時間労働で、家族と離ればなれ、生活もままならない様子です。

 

数年前公開された「家族を想うとき」https://eiga.com/movie/91138/ (上のパリタクシーもそうだけど、邦題なんとかならないか)という映画でも、セーフティーネットから漏れた労働者の話が柱でした。監督のケン・ローチは、底辺で見捨てられた人たちを描くのと、観終わったあと二度と観たくないという気持ちにさせるのが得意な人です。この主人公は、おそらくアマ○ンのような企業の委託を受けた会社から、1個いくらで仕事を引き受ける個人事業主です。一見割に合うような気もするのですが、1100件以上さばく必要があったり、車の確保・保険費用自分持ち、病気になっても家族に問題起きても休めない(ラストは地獄)等々。

 

前回非正規の話をしましたが、非正規であっても労働日数や労働時間から、社会・雇用保険はとりあえず加入しているケースが多いです。でも、個人事業主・業務委託の場合は、労災や失業保険などのセーフティーネットから漏れてしまうことになります。以前は、製造業の現場で、実際は指揮命令関係があるのに個人事業主で働くケースが多かったのですが、そこは派遣にシフトしていきました。今は運送業で、消費者を(に)届ける仕事を担っている人たちがターゲットとして多く使われています。

 

世界中で新自由主義が跋扈し始めた2000年代以降、株主の意向に沿うよう企業がひたすら経費を切り詰めていく中で、本来聖域であったはずの人件費に手をつけるとどうなるか。その昔、フォードが車の大量生産を始めたとき、確かに非人間的な製造工程(チャップリンの「モダンタイムス」が有名です)はありますが、労働者も消費者であるという立場に立っていました。でも今は、そんなこと関係ないのです。その企業群も結果的には自分の首を絞めることに、近い将来なっていく未来が見えるようです。1%の連中だけ繁栄したままで。

 


社会保険労務士法人ぶれすは、経験豊富な社労士が「働きやすい会社づくり」を全力でお手伝いいたします。

お気軽にご相談ください。

ご相談窓口はこちら>>>

 

こちらの記事もおすすめ